「ジャーナリズムに戻ることはないね」レイオフされた記者がつぶやく。
ソファーに深く座り込んだジェイソン・ロバーズ、きつく遠くを見つめている。隣に浅く座っているのはロバート・レッドフォード、グラスには濃いお酒。しばし無言でいる。ダスティ・フォフマンがグラスを3つ持って歩いてくる。周りに大きな声で笑いかけて、グラスを持ち直す。フェイ・ダナウェイが振り向く。エドモンド・オブライエンがグラスを大きく上げる。
11月初め、ロサンゼルス郊外に、十数人の地元ジャーナリストが集まった。今回の金融危機で突然レイオフに直面したロサンゼルス・タイムズ紙の記者や編集者を励まし、別れを惜しむための“送別会”だった。 レイオフされたのは、長年にわたって編集に従事したベテランが中心。交わされる言葉のはしばしに、突然言い渡された解雇に対する戸惑いと悔しさがにじんだ。
同紙を傘下に持つトリビューン社は昨年、シカゴの不動産王サム・ゼル氏に買収された。参加者からは「経営陣は新聞ビジネスを理解していない」など辛辣な意見も聞かれたが、結局のところ、現在の苦境をもたらしたのは「インターネットの影響に尽きる」との分析がほとんどだった。
これは産経新聞2008年11月18日付けのロサンゼルス=松尾理也氏の記事である。メディア変化の最前線のワン・シーンだ。
金融危機表面化以降、米活字メディアが軒並みレイオフの嵐にさらされている。新聞業界では次々にレイオフが明らかになっている。 新聞だけではない。週刊誌タイムやスポーツ・イラストレーテッドなどを発行するタイム社は100人に上る自発的退職者を募集。 タイム社発行の雑誌として自らもレイオフに無縁ではないフォーチュン誌は、「活字メディアが死に絶えることはない」と強調しつつも、「今起きていることは、鉄道の旅がジェット機による空の旅に置き換わったような変化だ」と論評している。
「レイオフされた後、多くはPR会社など報道以外の分野に去っていく。ジャーナリストとしての職場そのものが縮小しており、同業他社に移るという選択肢はほとんどない」。 インターネットに押されるここ数年の流れに急激な景気低迷が重なった形で、将来の状況好転につながる材料がなかなか見つからないだけに、去っていく記者や編集者からは「もうジャーナリズムの世界に戻ることはないだろう」との悲観的な声も多く聞かれる。
と続く。インターネット上にこのシーンを載せるのはジョークにもなっていないか。