「勘平さん」と、姿態(しな)をつくって女形の声色でコビィルのおかるが、ベニングホフ扮する勘平に声をかける。
勘平「これ、鎌倉を出て、やうやうと、ここは戸塚の山中。石高道で足は痛みはせぬかや」
おかる「なんの、なんの。それよりはまだ、行き先が思われるわいなぁ」
「恋に心を奪われて、お家の大事と聞いたとき、重きこの身の罪科と…
勘平は武士の面目にかけて自刃しようとするが、必死になっておかるはそれを止めるのだ。しかし勘平は、後先のことを考えず、ここまで来たが、主君の大事のときに余所にいた自分の責任を思えば、とても生きてはいられぬ。なまじ命を永らえていたら、腰抜け武士と笑われる。さらばおかる。と、なおも刀を腹に突きたてようとする。
私ゆえの不忠であなたが死ぬなら、私も死ぬ。でもそれは只の心中で終わってしまい、誰が誉めるだろうか。いまはひとまず私の故郷で世を忍び、時を待ちましょうと切々と訴えるおかるの言葉に、ようやく勘平は切腹を思い止まる。
このとき二人を追う高師直の家来、鷺坂伴内が現れ勘平と立ち回りになるが、伴内を追い払い、二人はおかるの故郷に帰っていく。
「先は急げど心は後へ、お家の安否如何にぞと、案じて行くこそ、道理なれ。
ここで幕が閉じると、会場から一斉に拍手が起こった。松竹から衣装を借りたり演技指導があったとはいえ、アメリカ人の彼らが、よくここまで演じたと貞吉たちは舌を巻いた。
主君の仇を討つには軍資金が必要で、そのために悩んでいる勘平のため、おかるは内緒で祇園に身を売り、金を調達する。その金を受けとった父親、余市兵衛は一刻も早く婿の勘平を喜ばそうと夜道を急ぐが、不運にも盗賊定九郎に殺され、金を奪われてしまう。
その定九郎を勘平は猪と間違え、鉄砲で撃ち殺してしまう。が、それが人間だと分かり愕然とするが、暗闇で勘平には殺した相手が誰だか分からない。だが死体の懐の金に気がつき、悪いこととは知りながら、主君のためと自分に言い聞かせ、その金を手にする。
家に帰ると余市兵衛の遺体が運ばれてきた。殺したのは自分かと思い込んだ勘平の落ち着かぬ態度に不審を抱いた義母は、余市兵衛を殺し、折角の金を奪ったのは勘平だと決め付け、恩知らずな不幸者と責めたてた。
そこへ来合わせた同志の不破数右衛門も経緯を知り、お前の非道な行為は亡君への不忠、恥辱だと罵り、立ち去ろうとする。
暗闇で間違えたとはいえ、舅を殺してしまったと思い込んだ勘平は、死をもって詫びようと、刀を腹に突き立てた