RINC(凜c) RINC(凜c)について /  お知らせ /  ユーザー登録案内
記事検索
ようこそ ゲスト さん : 一般 (会員登録をおすすめします)
登録タグ

文芸   アメリカ   歴史  

小説「霊南坂の星条旗」その29 BY KIKUYA FUNAYAMA

季節ワーカー ]

|  閲覧:670  |  コメント:0  |   一言コメント:0  |   お気に入り登録:0  |

投稿  09年07月07日 18:24:02  |  最新の更新  09年07月07日 18:24:01

 殿様にご恩がありながら、色に溺れたばっかりに大事な場所にも居合わせなかった。しかし仇討ちに加わりたいと必死に思うあまりに、大変な大罪を犯してしまった。今は死んでお詫びをするばかりと、勘平は無念の涙でいう。
その言葉に数右衛門が余市兵衛の体を改めると、鉄砲傷ではなく、刀傷だった。この犯人は定九郎と判明し、誤解は解けたが、勘平はすでに虫の息。
数右衛門は仇討ちの連判状に血判をさせ、勘平も義士の一人に加わったと告げるのである。
勘平は魂魄この世に留まりて、敵討ちのお供をせずにいられるか、と言い残して死んで行くのだった
ドューマンはさらに言葉を続けて、四十七士が討ち入りを果たす忠臣蔵の結末まで解説した。
「役に入れば、日本人になりきれる」
舞台を終えた外交官たちは口々に言った。
しかし、同時に
「なぜ勘平は自分から死ぬのか。それは自暴自棄なのか」
死を恐れないのは何故か」
「日本人の責任の取り方は死ぬことなのか」
面目とは何か」
「日本人のいう忠義、義理、情けとはどこから生まれるのか
「なぜ彼らは復讐したのか」
「なぜ日本人は『忠臣蔵』を好むのか」
等々の疑問がアメリカ人たちの間に雲のように湧き上がったのだ。そして貞吉たちも巻き込んで、喧々諤々の議論が展開された。
本の理解に意欲を燃やす外交官たちは、グルーを交えて日本人の心を理解するキイ・ワードは何かと真剣に取り組んでいた
「義と情に挟まれたとき、日本人はその二つにともに誠を尽くそうとして、その解決策として死を選ぶ」
彼らは一応こう結論を下した。こうしてグルーは歌舞伎にとどまらず、あらゆる機会を通して日本人の深層心理を掘り下げようと努力を重ねていた。
それにしても、と貞吉は思った。アメリカの外交官たちが、日本と日本人について、これほど熱心に学ぼうとしているのだから、日米間に戦争など起きるはずはない、と。
しかも彼らは日本とそこに住んでいる人々が好きなのだ。この人たちがいる限り、日本とアメリカは友好を保っていける。そう貞吉は信じたのだ。
 

この記事へのコメント

RINC(凜c)編集部からのお知らせ
PR情報
おすすめ記事ピックアップ

つぶやき由宇

[  由宇 ]

誕生日の前日、久々の銀座で転んだ。もう、2週間前になる。骨折...

つぶやき由宇

[  由宇 ]

熊が頻々、街に出てくる。2、400頭が捕まり、2、100頭が...

一言コメント(最新20件まで表示)
最近読んだ記事

三度許すまじ

[  佐久爺 ]

今日、8月9日は長崎に原子爆弾が投下された日、毎年、現地では...

003 東京お墓タワー

[  IVYポサリ ]

 東京はお墓が不足しております。んでもって東京お墓タワーにし...

1月14日日本テレビ放送の特番『東大落城』は、センター試験の3日前だった。

[  セニア・ロディ ]

この番組のあと、他チャンネルの成人の日テーマの番組で「終...

最初で最後の特別ライトアップ

[  季節ワーカー ]

12月1日の夜6時半より15分間だけ灯された、特別バージョン...

米国には、オバマさんが出現した。

[  セニア・ロディ ]

顔が見える、期待される政治家は、なんと言ってもバラク・オ...

ハミングウエィ氏の北京レポート 2月5日号(内容続編)

[  IVYポサリ ]

 件のDVD屋、高級マンションの地下にあり、なぜかこの建物に...

ファンシー国家になりおおせたニッポン

[  タイスケ ]

 とっくの昔だよ、と言わないでください、かねがねそうではない...

あなたの隣りにクローンが立っている。

[  セニア・ロディ ]

 “ドリー”という名前にご記憶がおありか。そう、クローン第1...

001 芝の斜塔

[  IVYポサリ ]

経営が傾いているのなら、いっそ塔ごと傾けちゃえ!  苦しいな...

(9)え、こんなデザインあり!?

[  IVYポサリ ]

いやー、びっくりしました。どこまでもねじれて昇っていくこのカ...

キャロットジュース

[  由宇 ]

暑い、暑いと言い暮らした今年の夏、減退の食欲を救ってくれたジ...

(10)サムスン建設が世界をリードしているらしい。

[  IVYポサリ ]

 高さ100階を超えるビルは超高層ビルとは呼ばず、ハイパービ...

疎開先での大空襲(1)

[  佐久爺 ]

 私は昭和19年(1944年)4月、生まれ育った東京の板橋か...

酸っぱいおそうめん

[  りんどう ]

グルメという程のものではありません。 昨日 じっとり暑い昼...

小説「霊南坂の星条旗」その1 BY KIKUYA FUNAYAMA

[  季節ワーカー ]

 これは、KIKUYA FUNAYAMA氏のドキュメンタリー...

タコとペッパー

[  由宇 ]

たことピンクペパーの出会い。何のことはない、茹でだこをオリー...

ボタンは外す

[  jin ]

出揃った自民総裁選の各局インタビューを見ていて、変なことを思...

鉋(かんな)

[  由宇 ]

かつお節を削る「かんな」。明治生まれの母からの贈り物の話でご...

東京タワー君、船場吉兆しちゃってる。

[  IVYポサリ ]

エレベーターに乗ると「只今より地上150mの大展望台へご案内...

東京タワーはいくら稼いでいる?

[  IVYポサリ ]

東京タワー、正式には日本電波塔㈱の年間収入である。年間の収入...

アオガエル

[  しょうちゃん ]

ちょっと下ぶくれで愛嬌ある顔立ち。丸みがあるけど華奢なボディ...

【児童文学】ハカラメ(作・水崎耀子)【2】

[  水崎耀子 ]

おばさんの家は、思っていたよりずっとあたたかかった。 夕食...

つぶやき由宇

[  由宇 ]

つぶやき4/2010/6/1 「年金の仕分けに苦労 奇数月」...

つぶやき由宇

[  由宇 ]

燃えないゴミ出しの朝8時、マンションの前の道を母と子の二人連...

つぶやき由宇

[  由宇 ]

留守電に訃報が入っていた。出版社時代の上司。来年の米寿に出版...

つぶやき由宇

[  由宇 ]

白血球4900、検診で初めて気にした数値である。抗癌剤投与中...

ハミングウエイ氏の北京レポート、9月7日号

[  IVYポサリ ]

ちょっと長くなるけど・・・昨日は・・・ 今月は1号店オー...

つぶやき由宇

[  由宇 ]

参院(員)選挙が終わった。菅さんの負け。いえ、民主党の負け。...

つぶやき由宇

[  由宇 ]

つぶやき3/2010/5/31 寒い。冷夏の予報を耳にした。...

つぶやき由宇

[  由宇 ]

「薔薇の木に薔薇の花咲く なにごとの不思議なけれど」リルケだ...